(………)
…何て言えばいいんだろう。
気の利いた言葉も、聞きたいことの質問も出てこないぐらい、またしても放心してしまう。
言葉を詰まらせて何も言えなくなっていると、お互いの間に暫し沈黙が訪れる。
親父も遠い目をしていて、何を思い出して考えているのか。
すると、その沈黙を破るかのように、書斎のドアをノックする音が響く。
ドアの向こうから『旦那様、時田さんが御見えになりました』と、忠晴の声がした。
時田さん…親父の運転手だ。
親父はドア越しに『今行く』と告げて、席を立つ。
「…伶士」
さっき忠晴がハンガーにかけていたコートを再び手に取りながら、親父は言う。
「…『護る』のは楽じゃないことはわかっているだろうけど。命懸けだからな?でも…」
コートを取るその手は、力がグッと入っていて…少しばかりか震えていた。
「『護られる』のも楽じゃないんだよ。…覚えておけ」
「え?どういう…」
どういう意味…?



