「…あれ?知らなかったの?」

「し、知らないし!」



凌憲がきょとんとしているのが、憎い。

俺の知らないなずなを知ってると思うと、本当に憎いぞ…!



すると、凌憲はスマホをいじりながら話し出す。



「まあ…正確には、いつも綾小路先生と来るんだけどね?」

「…はっ!綾小路先生!」



ここで出てきたぞ、長くに渡る疑問ワードのひとつ。

綾小路先生!



「あ、綾小路先生とは何者だ!」

「そんな少年マンガの主人公みたいに、いきり立たなくても」

「………」



ホントだ。

思わぬ驚愕な話の展開に、ムキになってしまった。



「…で、綾小路先生って何者」

「日本舞踊の師範」

「はっ…」



にほんぶよう…。



頭がこんがらがった。



綾小路先生は、日本舞踊の師範…先生?

その先生とお着物を買いに来る。



「…え?え?…そんな日本舞踊の先生と、何でお着物買いに来るの?」

「舞台衣装を合わせに来るんだ。うち、サイズのお直しやリメイクもやってるし」

「舞台衣装…誰の!」

「そりゃ、なずなさんのに決まってるじゃないか」

「…はっ!」