捕らえていた俺がいなくなった掌をじっと見ている、余裕ありげな彼とは違って。

なずなは再び、アドレナリン大放出中ともいえる興奮ぶりだ。

また、目が血走っているといっても間違いない。



「絶対…逃がさない…」



そんななずなは、彼を捕らえている両腕にグッと力を入れる。



「…おまえが死ねば、何もかもが終わりだリグ・ヴェーダ」

「そうだね?…親の仇である僕が死ねば、恨み辛み人生終わるからね?…出来るかな?」

「このっ!…おまえぇぇっ!」



なずなの叫びと共に、辺りにズンと圧がかかったような気がする。

それは、重苦しく。

何か…嫌な感じだ。



しかし、なぜこの彼は、首を取られているにも関わらず余裕綽々なのか。



それとも…ただ、バカにして楽しんでいるのか。



どっちにしろ、これも良い気分にはならない。



不快な気分を噛み締めて、警戒しながら様子を伺っていると、状況の変化に気付く。

なずなを取り巻くように、もやもやとオーラが出現した。



しかし、それも違和感で…。



(黒い…?)



いつもとは、様子が違う。