本当にまったくだ。
俺は被害者で、何も悪いことをしていない。
しかし、あの二人が公然の場でイチャイチャしていても何も批判はなく。
俺ばかりが笑い者にされるのは、何故か。
それは…相手が兄貴だからだ。
兄貴は学園きっての天才。
高等部のセレブ軍団《VIP》の元メンバー。
自分なりの《正義》を振りかざせる、選ばれた人間。
黒でも白と言ったら白にすることが出来る権力を持った人間。
この学園の連中は、そんな《VIP》の連中を否定することが御法度とされている。
暗黙の了解。
正しいことを、正しいと言えない。
間違っていることを、間違っているだなんて…死んでも言えない。
『紅愛、それはしょうがないよ。だってこの学園の生徒はVIP様々なんだから。学園に寄付金たんまり与えてるから先生も何も言えない。でも…』
そう言って、凌憲は手に持っていたコーヒーのカップをそっとテーブルに置く。