俺が何だか…?

って何。



そんなことよりも、この拘束を逃れるために、さっきから体をジタバタさせている。

…のだが、四肢に巻き付かれたこの黒い羽根の帯はそれを許さず、彼の腕から逃れることすら出来ない。

どんな仕組みなんだ?この羽根!



一方、銃口を黒い翼の彼に向けたまま綾小路室長は、強めの説得を続けているようだ。



「…そんなこと、今は問題じゃないですよ?」

「またまた」

「一般市民を救うのが警察の役目ですからね?……な、なずなっ?!」



綾小路室長の驚愕の声と共に、俺を抱える彼の体が、ガクンと前に揺れる。

何かぶつかって…?!



見上げると、彼の背後に…いた。



「おまえ…何やってくれちゃってんだよ…」



彼の背後から、なずなだ。



彼の大きい翼を掻き分け、背後から左腕を彼の首に回していて。

もう一方の右腕の肘の裏を掴んでいる。

裸絞の体勢?!

両足で彼の体幹をがっちりホールドしていた。



「…いつの間に」



首を取られているにも関わらず、彼は焦る様子が全くないが。

なずなは、違う。



「渡さない…」

「…へぇ?」

「伶士は…渡さないっ!!」