ちっ。



「そ、そ、それより!…《水星乱舞》にこんな使い方があったなんてっ…」



俺の腕から逃れたなずなは、動揺を誤魔化すかのように、この彼に全く別の話題を持ち掛ける。

だが、彼はそこを突っ込むことなく飄々としていた。



「…ああ。前、御館様に、この《水星乱舞》は単なる水属性の攻撃だけじゃなく、鎮魂、不動縛も出来るんじゃないかって言われてたの思い出して」

「御館様に?」



おやかた様?御館?親方?

何だ?その屋敷の主、もしくは大工のリーダーのような言い方の人物は。



…と、今はそれどころでない。

こうしている間にも、綾小路室長の話は続いている。






「…この札幌市では、魔力による取引、それによる傷害、人身売買などなど、魔力に関するあらゆる事を禁止しております。…ですので、その魔獣の所有、飼育も例外ではありません」



ざわめくVIPやレディクラにそう淡々と説明するのは、ガサ状翳したままの、綾小路室長だった。



「…魔力、魔術とは、一般市民にとっては決して抗えないモノ、防ぎきることの出来ない脅威でして」

「き、脅威?…何それ」