そう叫んで、なずなは魔獣の前にバッと飛び込んでくる。
正面に立ち、両手を拡げて訴えかけた。
「…私がおまえを止めてやる!…これ以上人間を傷付けさせない!」
ギョロギョロと動いていた魔獣の視線は、なずなを捉えて止まった。
そして、今一度、大きな鳴き声…悲鳴をあげる。
長く、長く鳴いている。
「…何年もまともにメシ食ってないから腹減っただろ?…弓削先生に頼んで、魔界の泉の水、持ってきてやるから!」
あまりの大音量で、なずなの声は魔獣の鳴き声に掻き消されている。
でも、それでもなずなは呼び掛ける。
「…絶対、元の世界に返してやるから!…言霊『鎮魂』」
そして、胸元で手を合わせる。
足元からフワッと風が吹いた。
一瞬、訪れる静寂に。
言霊が風に乗せられる。
「…群青の空・白銀の雲・金璽鳥の羽衣・冴緑の雫…」
なずなの体から、柔らかく白い光が、ポワッと放たれる。
「…伶士!」
「薫?!」
その時、薫が引き返して俺の元へと駆け寄ってきた。
来るなり、俺の腕を掴んで引っ張る。
「な、何?」
「伶士も逃げよう!」



