先頭に立ってなずなに文句をつけるのは、二年の一ノ瀬。



「藤村に何をしたかは知らねえが、泣いて許されると思うなよ?」



そう言って、なずなを上から見下ろして威圧しているが。

今の…このなずなに通用するワケがない。



なずなは、その座った目で…血走ったその目でゆっくりと一ノ瀬を見上げる。



「…おまえこそ、小さなハコの中でイキがってんじゃねえぞ?井の中の蛙、大海を知らず」

「あぁ?!…おい、随分と威勢の良い女だな?…マワすぞおまえ!」



導火線が短いのか、一ノ瀬はすぐに表情に怒りを見せる。

なずなに一歩近付き、「コラァ!」と、なずなのブラウスの襟元を掴んで引き上げた。

その瞬間、なずなは眉間にグッとシワを寄せ、拳を待機させていた。



(…いけない!)



…待て!

一ノ瀬、マワすどころの話じゃない!

…腹パン一発で内臓破裂するぞ!



なずなに、手を出させてはいけない。



そう思うと、二人の元へ駆け出していた。



「…れ、伶士っ?!」