「…ゲロった。ゲロったな」
なずなは、ボソッと呟く。
唖然というよりも、もはや呆れてる様子なのか、顔が無になっている。
チベットスナギツネみたいな。
目、死にかけてる…。
「拓狼さん…こいつら、完璧ゲロってますけど」
『うーん。腸までゲロゲロ吐かせようか』
無線で恐ろしい会話をしてますが…。
『確かに、殺人罪の立件は難しいと思いますが…重要なポイント、ありますよ?』
「…え?」
すると、無線の向こうの綾小路室長はくすくす笑う。
『…田丸くん、死んでませんからね?』
「…あ」
そうだ。そうだった。
『…なーのーで。こんだけゲロってもらえれば十分ですよっ。それに我々の役目はその魔獣の回収と、田丸くんの体内の魔力との照合。ありったけゲロさせて、他は他に任せる。だから、ムキにならないで、ね?』
「………」
『…こら、なずな。返事』
法律や罪のことはよくわからないから、そこは綾小路室長の指示に従うとして。
(………)
…しかし、俺はさっきから。
とあることに不安がついて、離れない。



