「あぁ、そうだよ。このバケモノがいりゃ、俺達に逆らうヤツは誰もいねえ。生徒も、教師もな?…こうやって、バケモノ見せて脅せば大半のヤツは黙るか、学校から消え去る」

「脅し…?魔獣を見せて、人間を脅していたのか!」

「そうだ。いい道具だぜ?このバケモノ」

「道具…!」



な、何だって…?

こいつらは…このバケモノを使って、自分らにとって邪魔なヤツらを脅していたのか?

今の、この伊藤さんのように…?



「…魔力封じの札が貼ってある。なるほど。だから、こうやって何年も人間が魔獣を飼うことが出来たのか…檻が小さな結界になってる」



そう呟いて、なずなは改めて魔獣を見る。

何枚もの御札が貼ってある、魔獣の体も。

その表情は…どんどん険しくなっていく。



「こんなに痩せて…吸血魔獣は生物の血液か、魔界にある泉の水でないと、生を保つことは出来ないのに…!」

「…はぁ?何言ってんだ?この女」

「誰が…誰が、この魔獣をここに連れてきたんだ!魔界の最下層に住んでる魔獣だ。時空の狭間に紛れて人間界に迷い込むなんてあり得ない!誰かが故意に連れてきたんだろう!」