落ち着いて問い掛けてみると、背後で腕を拘束している俺の顔を振り返って見た。

そして、ボソボソと語られる。



「…いや。あのおじさんは、昨年の秋ぐらいに…飼育員さんと突然現れたんだ。バケモノの世話をしてくれるって」

「…飼育員?」



驚きだ。

掃除のおじさん…赤鬼ゴリラの他に、もう一人いる?

飼育員?




「…昨年の秋?」



なずなの表情が、微妙にピキッとしていた。



「…バケモノの世話?…その飼育員とやらは、掃除のおっさん同様、毎日来るのか?」

俺の問いに、猪狩は首を振る。

「いや…その初めて来たその日だけだ。正直、俺もその当日はここにいなかったから、実際どんな人かは知らない」

「そうか…」

「…お、俺だって!…あんなバケモノ所有してるなんて知ってたら、VIPなんかやってない!ま、まさか、こんなことまでやってるなんて…!」

「…だが、私利私欲を肥やしてふんぞり返ってたのは間違いないだろがコラァ!このっ…セブンライトがぁっ!」

「わ、わわっ!」

俺が冷静に尋問してるのに。

アドレナリン大量放出中のヤツが、横入れしてきやがった。

まったく…。