その場では取り敢えず「わかった」と了解の返答をするが。

再び歩き出し、その意味を考えてみると、それはちょっと腑に落ちないかもと思い始めた。



走って逃げろ?

…何を言ってる。

もしそれが、一人だったら尚更。

おまえを置いて誰が逃げるか。




それから、ワンフロア分階段を降りて、ただ道なりに真っ直ぐ歩く。

生徒一人いない長い廊下を。

ガラーンと静けさを保っているせいか、俺達も言葉を交わさずただ歩いているせいか。

足音ってこんなに大きいんだ…と、思えるぐらい足音は響いていて。

それが、一層の緊張感を増す。



やがて、校舎の繋ぎ目が見えてくる。

そこは…俺が去年までいた中等部の校舎。



そして、繋ぎ目手前の左手にて、立ち止まる。

注意して見ていなければ見落とすぐらい、まるで隠し階段のようにひっそりと階下へと続く細く長い階段がある。

二人並んで、階上から見下ろす。

薄暗くて、本当にどんよりひっそりしているな。



「…ここか?」



なずなの問いかけに、頷く。



ここが、VIP専用のラウンジへの入り口。

俺も、久々だ。