元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

病室のベッドの上でたくさんの管や機械につながれている母を見つめながら、杏奈は母に話しかけた。
母は真っ青な顔をして目を閉じている。

何度も何度もバイタルを確認している機械のアラームが鳴って、看護師がアラームを切ったばかりだった。

「お母さん、お父さんに会いたい？」

今までも危険な状態になったことは何度もある。そのたびに父に連絡をしてきた杏奈。でも、父は来なかった。そんな父を杏奈は今でも理解できない。

でも、杏奈にはこれが本当に最後になるだろうと心のどこかでわかっていた。

「会いたい？」

絞り出すように言った杏奈の言葉に母の瞳から一筋の涙が伝った。