元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「ぜひ」
シェフと話をする瑠衣は昔よりも大人になった。
スーツを着こなす男性になった瑠衣をちらりと見ながら杏奈は改めて瑠衣がもう一度自分のそばに戻ってきたのだと実感した。

シェフとの話を終えると、二人のテーブルに店員が注文を受けに来た。
「ラザニアとオムライスとチョコレートパフェとフレッシュオレンジジュースとホットコーヒーください。オレンジジュースは食前で、パフェとコーヒーは食後でお願いします。」
「承知しました。」
注文はすべて瑠衣がしてくれるのも昔からだ。
こういう時、杏奈は緊張してしまう。そんな杏奈に代わって瑠衣がいつも食事に出かけると注文をしてくれた。しかも好きな飲み物や、欲しいタイミングまで覚えている。
「ありがとうございます」
注文してくれた瑠衣に杏奈がお礼を伝えると、瑠衣が微笑みで返した。

「で、誰と来たんだ？」
「え？」
「さっきシェフが杏奈は店に来てたって言ってた。誰と来てたんだ？杏奈も一人でこういうとこ来れないだろ？」
杏奈も一人で外食できない人間だ。注文すらできないのに、一人でなんてもちろん来ることができない。