元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「帰ります・・・」
バツが悪くてうつむきながら杏奈は自分の席から立ち上がり、自分のバックに机の上のものを入れ始めた。

視線をあげなくても瑠衣が自分の席から立ち上がり自分の方に近づいていることが分かる。

瑠衣の足音が杏奈の背後で止まった。

「すみません。社長に対しての言葉ではありませんでした。帰り」
杏奈が瑠衣に背中を向けたままカバンに荷物をつめるのをやめずにいると、杏奈の話の途中で、瑠衣が後ろから杏奈を抱きしめた。

何が起きたのかわからないまま杏奈の動きが止まる。

大きな瑠衣の体に杏奈の体が包み込まれる。

杏奈の耳元で、瑠衣の吐息が聞こえる。

その懐かしいぬくもりに、杏奈は必死で涙をこらえた。
涙腺が壊れているのか、簡単に泣きそうになる。