言葉はなくても杏奈の心に瑠衣が「大丈夫」と言っているのが聞こえてくる。

不安な気持ちのまま、杏奈は手を離した。


瑠衣は胸を張りながらステージの中央に用意されたマイクの前に立った。


そしてその場から、会議室にいる社員一人一人と目をあわせるようにゆっくりと視線を動かしながら会議室を見渡す。

一通り見渡した瑠衣は、少し振り返り、杏奈の方にも視線を向けた。


不安そうな杏奈と目があった瑠衣は明らかに口角をあげて微笑んだ。

この期に及んでなんで笑ってんのよ。
緊張しておかしくなった?

そんなことを思いながら杏奈は祈るような気持ちで瑠衣を見つめた。