元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「わが社の製品に不備があったようです。これから関係社員が報告に来ることになりました。詳しくはその際に説明するとのことでしたか、かなりの数の商品回収になるそうです。」

杏奈の言葉だけでも、瑠衣にとってはどれだけ状況がよくないか分かる内容だった。

「わかった。」
短く杏奈に返事をする瑠衣の表情がかなり険しい。
それでも「少し座ったほうがいい。顔色悪すぎだ。」と杏奈を気遣う。
「大丈夫です。」
たったまま何かをしようとする杏奈の横に瑠衣は立つと、「大丈夫。俺たちの最初の試練だな。」そう言って、杏奈の心を少しでも落ち着かせようとぎこちなく微笑む杏奈だった。
「乗り越えて見せる。大丈夫。」
杏奈の肩に手を置き、椅子に座らせると瑠衣は自分の席に戻った。

「俺の今日のこれからの予定、全部キャンセルしてくれ。」
「わかりました。」
「理事長にも俺から詳しく報告するという旨と、今わかっている状況を連絡入れてくれるか？」
「はい」
自分の机に戻った瑠衣は社員が報告へ来るまでのわずかな時間で一日の行う予定だった仕事を片付けながら杏奈に指示をした。