元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

杏奈の母の四十九日が過ぎて、瑠衣はスーツを着て杏奈の父に挨拶に行った。緊張しながらもしっかりと未来について話をする瑠衣に、杏奈の父は少し瞳に涙を浮かべながらも娘をお願いしますと深く深く頭を下げた。

まだ、父との間には距離のある杏奈。
それでも、瑠衣は積極的に杏奈の父との関係を築こうとしていて、挨拶だけのつもりが急遽父の家に泊まり、瑠衣と父は深夜までお酒を交わした。

先に酔って眠ってしまった父を、杏奈が敷いた布団に瑠衣が寝かせると父の瞳から涙が伝う。

愛する人との約束のために離れることを選択した父。
そしてその愛する人を失った今、亡くなって時間がたっても、愛する母への気持ちは膨らむばかりなのだと父と母の愛の深さを改めて知る杏奈は、父の涙を見て涙があふれた。

そんな杏奈の肩を抱く瑠衣。

かなりお酒に強い瑠衣は、杏奈の父と同じくらいのペースで飲んでいたにも関わらず、顔色一つ変わっていない。
ちらりと杏奈が瑠衣を見ると、瑠衣は杏奈の肩を抱いたまま言った。
「お義父さん、今でもお義母さんを愛してるんだな。しかもかなり深く」