元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「11時から会食があります。川崎病院の医院長と役員の方が参加されます。いままで川崎病院はなかなかアポがとれない病院でした。それでも、最先端の機器を次々に投入し、使用する製品には院長先生がかなりこだわっているようです。」
社長室。瑠衣の机の前に立ち、杏奈が手帳を見ながら話をしていた。
「院長先生はまだ若く、ご自分も現場に常に入っていられるような方です。そのためなかなかアポをとることができませんでした。」
杏奈の話を瑠衣が真剣に聞いている。

「わが社の製品をいくつか実際に見てみたいと申し出があったのが昨日で、時間をとっていただけるのが本日のみでしたので、急な会食になり申し訳ありません。」
杏奈の言葉に瑠衣が首を横に振る。

「だから俺よりも今日は先に出勤して、いろいろ資料を集めてくれてたのか。」
「まだ、整ってはいませんが、欲しいとリストが来た製品に関しての説明書や、使用方法、現在の在庫状況を確認しています。」
「さすが」

社長である瑠衣は会食をしながら製品に関しての説明を行い、新規で契約を結ぶことも仕事のうちだった。すでに何年も前から契約をしている病院や医療施設の重役とも、瑠衣は時間が許す限り実際に会ってやり取りをすることを大切にしている。