元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

父と母の約束を知って、二人の間に自分の知らない愛がまだあったのだと思った。

でも理解しきれないことがたくさんある。


母の気持ちを知っても、父が強引にでも母と一緒にいたら違う未来があったかもしれないとどうしても思ってしまう杏奈。

父のことを完全に許せていない杏奈には、まだ父とつめられない心の距離がある。

「本当に杏奈には申し訳ないことをした。つらい思いや大変な思いばかり。本当に申し訳なかった。」
父が杏奈に向かって深々と頭を下げる。
「やめて」
周囲の人の目を気にしながら杏奈が言うと、父は少しして頭をあげた。

「母さんとの約束とは言っても、父さん、怖かったんだ。」
「・・・」
「目の前で苦しんで弱くなる母さんを見るのが怖かった。」