元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「本当はもうすぐ、留学してからずっと研究していたものが成果をあげられそうだったんだ。そしたら帰ろうって決めてた。」
「・・・」
「でも、俺の母親が末期のがんだってわかって、親父から会社を継いでほしいって連絡が来たんだ。」
瑠衣の口から聞く初めてのこと。

杏奈は目を閉じたまま耳を傾けた。

「なんで今なんだって思ったよ。もう少しあとだったらって。あと半年先だったらって。」
「・・・」
「でもさ・・・親父からの初めての頼みに答えないわけにいかなかった。母親の病気の状況も詳しく知って、俺の研究の成果とか、地位とか名誉よりもやるべきことができたんだって・・・そう思って帰ること決めたんだ。」
「・・・」
「いつもどきどきしてたよ。もう杏奈にはほかのだれかがいるんじゃないかって。もしかしたら結婚してるかもしれないとか思って勝手に苛立ったりもしてた。ばかだろ?」
瑠衣の言葉に首を横に振る杏奈。