元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する

「本当はすぐに帰って来ようと思ったんだ。日本に。」
「・・・」
杏奈は保冷剤を目に当ててもらったまま、瑠衣の話を聞いている。

「でもダメだって思った。」
「・・・」
「俺には杏奈を支えられないって。留学したら俺なんてみそっかすみたいなもんでさ。何にも知識もスキルもない凡人以下の扱いだったんだ。何勉強してきたんだろって思いたくなるくらい、外国では俺の力なんて本当にちっぽけすぎだった。」
「・・・」
「そんな俺が杏奈の人生を背負う資格ないと思ったんだ。だから精いっぱい勉強して、ちゃんと胸張って杏奈を支えられる、杏奈の人生まるごと背負える男になってから、帰ろうって思ってたんだ。」
「・・・」

「でも、本当に俺、向こうでは何もできなくてさ。思ったより時間かかって・・・。」
時々瑠衣は話にくそうに言葉に詰まる。