「なんで信じられないって言うの」

「田中、うそばっかりつくから」

「なんでうそばっかりだって言うの」

「なんでなんでなんで、って。普段の行いのせいでしょ」




──ニシンは人参の仲間なんだよ。

──西瓜の種を飲んだら、死んじゃうんだよ。




田中はほんとう、うそつきだ。


「でも、ユメちゃんのことがすきなのはほんとうだよ」

「そうだとしても!田中がわたしをすきなんて」


信じられないよ。そう言おうとして、指先に力が入った。紙の上にのっかっていた尖った黒が滑り、紙を軽く抉る。


「あぁ、小説が。いっかいシャーペンは置こうか」


彼がわたしの手からシャープペンシルを奪った。