母を想えば



「店長、お世話になりました。」


「常連さんにはああやって言ったけど、
アタシも寂しいねぇ。」


「すみません・・。
せっかく雇ってくれたのに・・。」


「これ聞いたらまた旦那さんが嫉妬しちゃうかもしれないけど、

トモちゃんはこの仕事向いてるよ。」


「え・・・そうですか?」


「この業界はねぇ。

可愛いだけじゃダメ。
愛想が良いだけじゃダメ。」


「・・・・・・・・・・。」


「何て言うのかしら。

トモちゃんにはどこか全身から放たれてる“上品さ”があって、

その場に程よく“色気”が混ざるんだよねぇ。」


「あ、ありがとうございます・・。家ではたまに“ゴラァ!”とか言ってますけど・・。」


「旦那さんも贅沢よねぇ。そんなトモちゃんを独り占めできるんだから。」



「・・・・・・いや、逆です。」


「・・・?」


「あのアホを独り占めできる・・
私が贅沢なんですよ。」


「あらあら。

常連さんの前だと絶対そんな顔しないのに・・やっぱりトモちゃんも“女”ねぇ~。」



旧姓の“原口トモコ”として雇ってもらって、“トモ”としてお客さんと接した日々。


ハヤトの就職活動の間、
ガス代水道代電気代ご飯代・・

私達の生活を支えてくれたこのお店に御礼を伝えて、

再び、“満島さんとこの奥様”としての日々が始まった。