太陽が海に浮かんでいるような光景を、息も忘れて見入っていると、寺内先生が口を開いた。



「ここ、俺のお気に入りの場所なんだ。」



「お気に入り?」



「ああ。辛いこととか、無性に叫びたくなったときに来ると、すごく気持ちが楽になる。」



「・・・いいですね。そういう場所。」



「こんなに壮大な景色見てたら、俺らが抱えてる悩みなんかちっぽけなものに思えて、なんか、これでいいんだって思えるんだ。」



確かに、こんなに綺麗な景色見てたら、悩みとか全部どうでもよくなる気がする。



「西荻には、これを見て欲しかった。」



そう言った寺内先生の顔は、すごく優しい表情で、なのに、儚く見えた。



それを言えるような雰囲気ではなくて、ただただ黙って、夕陽が沈むのを見ていた。