「奈津センパイ?食べないんですか?」



少し心配そうに聞いてくる暁十くんに、少し食べようかなと笑って返す。



1番胃に優しそうな枝豆を何個か食べる。



それだけなのに、お腹はいっぱいになった。



暁十くんたちへの質問や噂話に適当な相槌を打ちながら、物を口に入れずにいた。



「おい。体調悪いんじゃないのか?さっきから顔色悪いし、何も食べてないだろ?」



やっぱり、1番に気づいたのは寺内先生。



私は、隅の方で寺内先生と少し話す。



「・・・ですね。頭が痛くて、少し吐き気もします。」



「やっぱりか。とりあえず、タクシーで帰れ。さすがにこの時間に電車はないし、歩いて帰れる距離じゃないだろ?」



確かに、もう夜中の1時。



私が住んでいる地域に行く終電は、少し前に出たばかりだ。



このままここにいても、体調は悪化するだけだろう。



「・・・そうですね。先に帰ります。」



「ああ。俺からみんなには伝えておくから。」



「ありがとうございます・・・。」



ゆっくりと立ち上がると、少し目眩がした。



それを見かねた寺内先生が、肩を支えてくれる。



少しドキッとして、寺内先生を見上げる。



「やっぱり俺も帰る。このまま1人で帰らせるわけにいかない。」



「そんな・・・悪いですよ。先生も全然飲んでないじゃないですか。」



「俺、そんな酒好きじゃないから。それに、フラフラな人を1人で帰らせる医者はいないと思うが。」



「・・・すみません。じゃあお言葉に甘えて・・・。」



「謝るなって。俺が見過ごせないだけだから。」



そう言った寺内先生の顔は、とても優しくて、今まで見たことの無い表情だった。