──俺の幼なじみであり、長年片想いしてきた奈津が、結婚する。
その事実は、奈津本人の口から聞いて、さらにその相手の寺内からも聞いた。
その場では笑って、おめでとうなんて言ったけど、すぐに飲み込めるような話じゃなくて。
結局、玄樹を呼び出して愚痴を零すことにしたのが、ここまでの流れ。
奈津は、俺にとって唯一の女の子で、自分の手で守ってやりたい存在だった。
かわいいのに無自覚で、鈍感で、体が弱くて。
とにかく男心をくすぐりまくる要素しかない奈津に近づく男を、できる限り排除してきた。
それでも奈津には何故か、彼氏ができるんだけどな。
何回も、周りのヤツらからお前が付き合えって言われまくったけど、結局それは無理だった。
俺ヘタレだし。想い伝えるのも関係壊れるのが怖いからって逃げてきた男だから。
それに多分、俺は奈津に告白なんかしたら、しばらくは話しかけることなんかできないから。
『凌空は・・・家族と同じくらい大切で大好きだから、話せないのは、やだ。だから、避けないでよ・・・。』
奈津のその言葉さえ、守れなくなるのは避けたかった。