「今日はたくさんあったんだな。」
「う、ん・・・。」
よしよしと頭を撫でてくれる手が温かくて、涙がどんどん出てくる。
「1日頑張ったな。」
人の命を救うために医者になったのに、救えない命がある。
患者さんやその家族の不安を取り除けない。
その事が悔しくて、不甲斐なくて、ときどきこうして泣きたくなる。
こうやって紘基が受け止めてくれなかったら、きっと私は泣くことさえできなくて1人で悩んでしまう。
こういうとき、紘基がそばに居てくれて、本当によかったって思うんだ。
「奈津、あんまり激しく泣くと喘息出るよ。ゆっくり深呼吸しよう。」
すーはーと深呼吸を繰り返すうちに、涙も少しずつ落ち着いてくる。
「ぐずっ・・・ありがと、紘基。もう落ち着いた。」
「よかった。息も苦しくなさそうだし、表情も明るくなった。」
そのまま少しだけ紘基に甘えたあと、ご飯を食べる用意を2人でする。