side 奈津


ふわふわとした意識の中、寺内先生の声が聞こえて、目が覚める。



「おはよう。体調大丈夫?」



「バッチリです!朝ごはん、作ってくれたんですか?」



「ああ。今日はフレンチトースト作ってみた。」



「やった!大好きなんです!フレンチトースト!」



なんてことない、朝の会話。



3ヶ月くらい前、結梨亜ちゃんが脱走した日から、私はしばらく寝込んでいた。



肺炎を起こしていたらしく、熱が下がらなくて大変だった。



瀬川さんや佐々さんのことは、寺内先生が解決してくれて、もう嫌がらせなんかは受けていない。



そして・・・さっきの会話でもわかったと思うけど、私たちは同棲を始めた。



今までも家は近かったし、私の体調管理の面でも、一緒に暮らした方がいいと思ったから。



最近では、院内でも有名なカップルとして知られているとか・・・。



結梨亜ちゃんも、今はリハビリを頑張っていて、今度から施設で暮らす予定だ。



「奈津?ぼーっとして、どうした?」



「なっ!いきなり名前で呼ばないでください!ドキドキして止まらなくなるじゃないですか!」



「ふっ・・・かわいいな、奈津は。」



「その顔はやめてください!」



未だに寺内先生のことを名前で呼べない私と、イタズラで、私の名前を呼んできたりする寺内先生。



こうやってくだらないやり取りをしている時間が、1番楽しい。