アイツは、食堂の窓際の席で、黄昏ていた。
そんな憂鬱そうな表情まで絵になって、ちょっとムカつく。
「・・・寺内。」
「葉原・・・俺、西荻に嫌われたかな。」
「・・・お前、バカなの?」
「は?」
「奈津は自分のことで落ち込んで泣いてんだよ。自分が、『彼女だ』って自信を持って言えなくて、不甲斐ないって。」
「え、それでお前に泣きついてたわけ?」
「俺が声をかけたんだよ。奈津は1人で全部抱え込んで、人前で涙は見せないから。・・・気づいてやらねーと、ダメなんだよ。」
「葉原・・・。」
「奈津を、これ以上1人で泣かすなら・・・俺はお前から、奈津を奪うよ。だから、よく考えて動け。」
「・・・お前って本当にお人好しだよな。」
「うるせえ。俺はただ、奈津に泣いてほしくないだけだ。ただの自己満足なんだよ。」
「葉原、ありがとな。」
いつもの自信に溢れた表情をした寺内が、たまたまそこにいた奈津のもとに歩いていく。
2人は、少し言葉を交わすと、笑い始めた。
・・・手のかかる2人だな。
寺内の言う通り、俺はかなりのお人好しなようだ。
・・・奈津を離すなよ。
寺内に心の中でそう言って、俺はその場を後にした。