side 凌空


しゃくり上げる奈津の背中を、ゆっくりと撫でてやる。



つーか、あの野郎・・・・。



奈津を幸せにしろよ。泣かせんじゃねーよ。



俺は、奈津が笑って過ごせるなら、それで十分なんだよ。



なのに、お前のその態度が、奈津を傷つけてんだよ。



それで、こんなに泣いてるんだ。



許すなんて、ありえねーからな。



「凌空・・・ありがとう。」



落ち着いた奈津が、俺の方を見て笑顔を浮かべる。



・・・・やっぱり、譲りたくねーな。



「目赤いから、冷やして戻れよ?俺も仕事戻るから、何かあったらまた連絡しろよ?」



「うん。凌空はやっぱり優しいね。」



それは奈津限定だ。奈津だから、優しくするんだよ。



でも俺は意気地無しだから、そんなことは言えなくて。



「だろ?俺ってめちゃくちゃ優しいんだぞ?」



そうやって、特別扱いも何もないような顔して、笑うんだ。



・・・全く、この2人は本当に世話が焼ける。



俺は、それなりのショックを受けているであろう、寺内の元に向かった。



・・・主に、文句を言うために。