「おはよ。何?」


呼び止めたということは、何か用があるということでしょう、保野田。これで何も用がないとしたら、突然ひとさまの家の前で立ち止まった変な女になってしまう。やめてくれよ。


「えー?笠原さんだーって思っただけだよ」


あぁ、そうだった。保野田はこういうひとだった。


「あー、うん、そっか。じゃあわたし行くね」


颯爽と帰ろうとする。も、わたしがマイペース不思議くんな彼に勝てるわけなくて。


「おいでよ、こっち。そこの門から入っていいからさ」


やだよ。口をついて出そうになって、慌てて飲み込む。このまま帰ったら、やばい女。


何も用がなかったことになる。


用を作るしかないのでは?ここら辺はよく通るから、近くのひとにやばいやつとしてレッテルを貼られると詰む。