「 ぐはぁっっ! 」

蓮が繰り出した風が、ヤツの放った竜巻みたいな風を引き裂き、黒ブチ眼鏡をも切り裂いたのだった。

血が、ドクドクと流れ出ているなか、黒ブチ眼鏡は、黒ブチの眼鏡と傷に手を当て、蓮を睨む。

「 まさか、こんな所で…、もしや、貴様は…、…まさか…な…。」

受けた傷を抑えた手からは、血がボタボタと滴り落ち、息を荒げ、肩で息をしながら片膝を地に着けた。


「 フン!他愛もない。」

あっさりと、黒ブチ眼鏡が、瀕死のダメージを受けて、動けなくなった様子を、蓮は、つまらなさそうにして眺めている。

最初に黒ブチ眼鏡に攻撃されて、一方的に痛めつけられていた天使の蓮と、今の天使の蓮とは、同じ人物とは、思えない。


「 …早く、…とどめを刺してくれ …。」

黒ブチ眼鏡が、呻きながら言った。

蓮は、氷のように、冷ややかな視線を黒ブチ眼鏡に向ける。

「 命は、たった一つだけしかないんだ、精々、大事にするんだな。」

「 サッサと退け! 」

蓮は、黒ブチ眼鏡にそう吐き捨てると、二人のやりとりを傍観している俺を捕まえた。

黒ブチ眼鏡は、瀕死を負っているにもかかわらず、苦笑いした。

「 …元は天使だった…と、噂で耳にした事がある…貴様が…その…人間に…なぜ執着する?」

だんだん呼吸が荒くなり始め、苦しみだす黒ブチ眼鏡。

「 …情けは…後で、後悔…する…事に…なるぞ…。」

そう、言葉を残し、最後の力を振り絞って両翼を大きく広げ身を覆うと、黒ブチ眼鏡は、次第に、空中に消えて行った。

「 …お喋りなヤツめ。」

空中に消えた、黒ブチ眼鏡のいた場所を蓮は見続けていた。