次は緩やかな風。
被せられた言葉。
人権返せ。
保科はまた邪悪にあまい微笑みを零した。
「行くよ」
「何の了承だよ」
この後どうやって切り抜ければいい?
説明? 弁明? 事実確認?
誤魔化したってきっと面倒くさいのに。
保科は心底憂いた感情に、甘い蓋を押し付けて、それで勢いよく私の手を引いた。
「えっ。いやなにこれ」
「うっさいよ。じゃあ見てろよ俺の勇姿」
「……勇姿、」
走り出す。
つられて足が動く。
勇姿。
言葉を噛み砕いて、集っている男子共の変な声援に目を向ける。
勇姿。
保科が私の手を引いて、駆けているその先は。
「待っ、待ってマジで待って! フリじゃないから止まって保科!」
「ゆきみちゃんウッザ」
「やんのかコラ。ってじゃなくて巻き込むなよ善良な市民を賭け事に巻き込むのか!」
「汚職の政治家じゃねえよ」
海。
ここはこの辺でいちばん危ないって建前で存在する火サスっぽい崖。
それから海に飛び降りて根性をはかるバカな伝統。
保科が地面を蹴る。私は引き戻そうと足をとめる。
縺れるぜんぶが、このバカげた集団の視線と声に押しつぶされそうに存在して。
「ほんっとに許さ、」
ない。
「いいよそれでも」
先に飛び出した保科の笑顔が下降する前に、諦めに似た感情と、なぜか熱い頬につめたい髪が触れた。
裸足にごつごつした石が当たる。地面を蹴る。
どうにでもなれよ、って、そいつはやさしくない。



