それから彼は事あるごとに、甘い言葉を囁いた。

私は全く相手にしなかった。
だって彼は二十五歳なんだから、遊びに決まってる。
案の定いろんな女の子に愛を囁いていた。

「つばさ、今日つばさのアパート行っていい?」

「えっ? ダメだよ、ほかの女の子のアパート行けばいいでしょ?」

「冷たいなあ、つばさは、ねっお願い」

断ったのに彼は私のアパートでご飯を食べてる、どうして?そう、私は押しに甘いのだ。
せがまれると断れない。

「つばさの食事、めっちゃ上手いよ、毎日食べに来るね」

「毎日なんて無理」

でもあれからやはり彼は毎日私のアパートに、仕事帰り寄って食事をして帰る。

そんなある日、会社で朝全社員が集められた。
新社長就任の挨拶のためだ。

飛鷹建設株式会社の御曹司がアメリカから帰国し、新社長に就任すると言うのだ。

飛鷹 剱 二十八歳 イケメン独身、彼女無し
全女子社員はいろめきだっても不思議ではない。

私は関係無いと思いまるで興味を示さなかった。

「先輩、イケメン御曹司ですよ」

そう、私に狙ってる雰囲気ムンムンの彼女は、私の後輩、真莉ちゃん、二十三歳である。

「つばさ先輩、うまくいけば社長夫人ですよ」

「真莉ちゃん、話が飛躍し過ぎ」

そこへ噂のイケメン御曹司が入ってきた。