番組開始5分前。

先程までの和やかな雰囲気はなくなり、皆がスタンバイしている。

蒼は、スタジオの隅に置かれた椅子に原田と並び腰を掛け、日比谷アナの様子を食い入るように見ている。テレビで見ていた憧れの人の番組をこんなに間近で見れるのだ。自分が出演するに当たり、何かひとつでも学びたいと真剣だ。

そして、タイムキーパーが本番までのカウントダウンを始めた。

いよいよだ。

「こんばんは。サンライズニュース、日比谷です。番組最後までお付き合い下さい」

と定番の挨拶から始まった番組は、真剣な表情で最新ニュースを伝え始めた。日比谷アナは、ほぼ台本を見ることなくスラスラと伝えていく。真剣な表情だったり、哀しい表情だったり、伝えるニュースの内容によって色々な顔を見せている。テレビで見ていつも視聴者にしっかり届いているが、スタジオで見ていると瞬きするのも忘れる位、魅入っていた。

気づけば番組は終了していた。

2時間がこんなに早いと思ったのは初めてだった…