事故に遭った本人からのお願いだ。

一瞬現場は静まり返る。

そこで原田が、
「質問がある方は挙手を。そちらの方手短に」

指名された記者は、
「東都テレビの氏田です。事故の後、現場を離れたと聞いていますが、警察が来るまでなぜその場に留まらなかったのですか?」

「僕と助けてくれた女性は、被害者です。あの時、雨が降っていてびしょ濡れになっている状況と、僕があの場に残ると混乱して二次被害が起きる可能性も考え、現場を離れ原田の方に状況を説明しに戻ってもらいました」

「では、次の方」原田が指名する。

「東都新聞の田中です。助けてもらった女性に名前など聞かなかったのはなぜですか?」

「女性に断られてしまった事と僕の事を知らなかったので敢えてそれ以上は動きませんでした」

「そろそろ次の仕事の時間がありますので、ここまでとさせていただきます」と原田が締めくくった。

まだまだ聞きたい事はあるだろうが、これ以上突っ込んだ質問が来ないうちに終了させた。

この会見も繰り返し報道されたのは言うまでもない。