にこりと笑った坂上さんの笑顔はやはり穏やかで、姫岡さんをとても大切にしているのは十分に伝わった。
’真央くんも喜ぶと思うし’はいまいち謎だが。喜ぶとは到底思えない。
嫌味のひとつやふたつで済めばいいものだが…何はともあれこれも坂上さんの仕事を手伝うバイトの一環だと思えば…。
決して芸能界の裏側を覗いて見たいという好奇心ではない。あくまでもこれはお仕事だ。そう自分に言い聞かせたものの浮足立った気持ちは止まらない。
私って案外ミーハーだったのだろうか。
「はぁー………」
「全くこれだからミーハーな一般人は」
「まあ、お前には一生縁のないような所だからな」
「俺がいるから特別な現場に入れると感謝しろ」
「スタッフさんたちに失礼な態度を取ったらただじゃおかないからな」
「沢山のスタッフさんがいて現場は成り立っている」
嫌味のひとつやふたつは覚悟していたけれど、当日姫岡さんは偉くご機嫌で車の後部座席でキャップを深く被りべっらべらと喋りまくる。
坂上さんの運転する車の中。隣では……余所行きの格好をした姫岡真央。もう見慣れたものだったけれど、やっぱり改めて見ると芸能人オーラ出しまくりだ。
本人は気づいちゃいないんだろうけど、私のような普通中の普通の一般人とはかけ離れた雰囲気を持っている。そんな事を本人に言えば「当たり前だろう」と調子に乗るのは目に見えているから言わないでおく。



