勿論自分っていうものが分かっているから、あんな言葉を本気に取っちゃいない。芸能界なんて可愛い子や綺麗な人だらけだろうし。
あ~あ…でもサインのひとつでも貰っておけば良かったなぁ。きっともう会える機会なんてないだろうしなぁ。
「ふ~んふ~ん…」
現在見ている姫岡さんが主演の連続ドラマの主題歌を鼻歌で歌いながら食器を洗っていると、ご飯を済ませた坂上さんが食器を運んでくれた。
「何かご機嫌だねぇ。
あ!それ真央くんの」
「そう!あのラブコメ面白いですねぇ」
「でしょ、でしょ。僕もあのドラマすっごく好きなんだ!
最初は嫌い合ってた主人公たちが段々好きになって行く過程が」
「キュンキュンしちゃうんですよねッ?」
ふふっと坂上さんと顔を見合わせて笑い合う。
どうやら坂上さんとは趣味が合うようだ。
「昴くんは――真央くんとは正反対だろう?」
「そうですね。まるで月とすっぽん。」
「あはは、昴くんは売れるのも遅かったから結構苦労人なんだ。だからスタッフさんたちからもウケがすごく良いよ。
それにこの寮に住んでた頃も皆から人気者だったし、僕はこの子絶対売れると思ってたらあっという間にスターだしなぁ」
「今度昴さんの作品も見て見ようっと
あッ…でも姫岡さんも良い人だとは思いますよ?」
その言葉に坂上さんは意外そうに眼を丸くした。



