「へっ!こいつが可愛い?綺麗だぁ?昴目が腐ってんじゃねぇか?」
「ちょ、姫岡さんいい加減にしてよッ!あっちに行け!邪魔!」
「あははは、ほんっと超ウケるし、ふたり見てると…。
本当に真央は全然変わらないよ。昔っから気に入ってる女の子には意地悪するもんな?」
「だ、だ、だ、誰がッ だ、だ、だ、誰を気に入ってるだと?!」
「久しぶりに会っても変わらなくて安心したよー」
そう言って昴さんは姫岡さんの肩を掴んで再び皆の輪の中に消えていく。
仲…いいんだな。なんだかんだ言っても昴さんに会えて姫岡さんも嬉しそうだし。
何より昴さんはその場をパッと明るくしてしまう不思議なオーラを持っているし、それに私を綺麗だ可愛いだなんて…
キャー!それはお世辞でも嬉しい。あんな素敵な人から優しい笑顔と褒め言葉をまさか貰えるとは…。この寮でバイトを始めて良かった。
かっこいい人が性格が悪いなんて嘘だ。ダイニングテーブルから蛇のような目をして睨みつけるあの男は別として――。
「じゃあまた。気が向いたら来るよ」
「もう来るなッ!」
仕事の現場に向かうという昴さんを、何故か姫岡さんと一緒にお見送り。
姫岡さんの言葉は無視して昴さんは私へ向かってにこりと笑みを向ける。思わずボーっと見とれてしまう。心の中で沢山気が向いてくれる事を祈る。
「静綺ちゃん」
「はい!」
「朝ご飯本当に美味しかった。ありがとうね」
「いえ!あのこれ良かったら。」
そう言って昴さんへとおにぎりの入った袋を差し出す。



