’実はなぁ、この寮の4階はいわくつきなんだ。
誰も4階に住んでいないってのはそういう理由があるっつーもんで
昔俳優を夢見ていた男が、ここの4階に暮らしていて
夢破れて地元に帰ったはいいけど自殺してしまったって話があって
それ以来夜中になると4階の奥の部屋にゆらっとした黒い人影があって
その人影がゆらーりゆらーり部屋の中に入って行くんだとよ’
4階は私しか住んでいない。
その話をしながら私の様子を伺う姫岡さんはと~っても嬉しそうで、馬鹿じゃないの?と強がってはみたものの、私は本当にその手の話が苦手なのだ。
瑠璃さんと豊さんはそんなの噂だよと言っていて、それを笑って聞き流していたが………。
姫岡さんの策略にまんまとハマり、眠れなくなってしまった。
外からぽつぽつと雨音が聴こえてきた。風も強くなってきて、横殴りの雨が窓を打つ。
小さい時にこんな話を聞いた事がある。雨の日に幽霊は出やすいとか、水場には幽霊が現れやすいと…。
頭から布団を被ってテレビの中の瑠璃さんの巨乳に目を向けて、何とか気持ちを落ち着かせる。その時だった…外からガタリと物音が聴こえたのは。
心臓がバクバクと脈を打ち、手足には尋常じゃない程の汗をかいている。 ガタリと物音が聴こえた後コツ、コツ、と不規則な足音が聴こえ始めた。
恐怖におののきながらもゆっくりと部屋の扉を開く。
電気の点いていない真っ暗な廊下の奥に真黒く揺らめく影。ゆっくりと動くその影が…奥の部屋に入っていた。



