「そうそう。私、結構姫岡さんの出てる学園ものが好きで。
でも昨日見たDVDはホラーでちょっと苦手でした……」
そう。私はホラー物が苦手だった。
姫岡さんはホラー作品にも出演していた。それを昨日の夜中に見てしまった。
苦手だと言うのに見始めたら気になってしまって、最後まで見てしまった。結果昨日の夜はトイレに行くのも恐ろしかった。
今でも思い出すとぶるりと震えあがる。そんな私を横目に姫岡さんはニヤリと意地悪な笑顔を浮かべた。
「何だお前知らねぇの?この寮の噂」
その意地悪な笑顔に嫌な予感がした。
そうだ。こんな話は聞かなければ良かった。
そしてこんな話をしてくるなんて、やっぱり姫岡真央は意地悪な男だ。
嫌味は相変わらずだが、最近は普通に話せるようになったばかりだと言うのに。彼の出演作品を見て、尊敬し始めたばかりだったのに。
―――――
「怖いよぉ………」
現在時刻は午前0時。ベッドの中で布団を被ってぶるぶると震える。
テレビの画面には瑠璃さんがえらく面積の少ない白いビキニを着て、プールで遊んでいるイメージDVD。
’瑠璃のも見てよぉ~’と彼女から今日手渡された。画面の中で笑顔をいっぱい作る瑠璃さんの豊満なお胸。…羨ましい。しかし今はそれどころではなかった。
「ひぃ!」
ガタッと風で窓枠が揺れる。その音に思わず身を縮こませて布団に潜り込む。
それもこれも先程姫岡さんからこの寮の噂話を聞いてしまったからだ。



