「このきんぴら美味しい」
「豊さん本当?まだおかわりありますよ~」
「ほんと?じゃ貰おっと」
そのやり取りを見て姫岡さんはムッとした表情できんぴらと向き合う。
「姫岡さんもおかわりありますよぉ~?」
ニヤリと笑いわざとらしく言うと、姫岡さんはまた顔を真っ赤にして怒りだすのだ。これにも慣れたもんだ。
勿論姫岡さんが人参を苦手なのを知っていてわざと言っている。いちいち反応が楽しいのだ。
「お前俺が人参が嫌いなのを知っていてわざと…」
「あれー?この間大好きって言ってませんでしたっけ?」
「…ちょっとこれ味付けが濃いんじゃねぇか
お前俺たちの健康を考えて献立立ててんだよな
まさか俺の血圧を上げて殺す為にわざと味付け濃くしてんじゃねぇの?!」
「はっ?どこが濃いのよ、あんたの舌がおかしいんじゃないの?!
大体いい大人が好き嫌い言ってたら大きくなれませんよ」
その言葉にまるで苦虫を噛み潰したような顔をして、鼻を押さえて人参を一気に口へ運ぶ。
その姿を見て思わず笑みが出てしまう。姫岡さんは涙目になって恨めしそうな顔を私へ向けるもんだから、また笑えた。
瑠璃さんと豊さんはそんな様子を見て、ふたりでヒソヒソと声をひそめて何か耳打ちしている。
そしてニヤリと不敵な笑みを浮かべて、私のエプロンを引っ張る。
「ねぇ静綺ちゃん…随分真央ちゃんと仲良くなったじゃん~?
もしかして~?」
豊さんはご飯を口に運びながら、ウンウンと無言で頷く。
「何か真央ちゃんも最近楽しそうだし~?静綺ちゃん、可愛いもんね~。
ね、真央ちゃ~ん!」



