「はぁ?!頑張っていただと?!気持ち悪い事を言うな!
俺はお前のような一般人と違って頑張らなくなって何でも出来る人間なんだ。
まさか俺が陰でこそこそとトレーニングしているだなんて誰かに言ったら、今度こそお前をぶっ殺すからな」
一体何度目の殺人予告だつーの。しかし知っているのだ。もう分かっていた。こいつが照れ屋で、照れている時ほど口が悪くなる天邪鬼な人間だって言う事は。
「いいじゃないですか。何でも出来る人間なのに更に努力まで出来るって普通にかっこいいと思いますけど」
じぃっと彼のビー玉みたいな茶色の瞳を見つめると、意外な反応をして見せた。
タオルで顔を半分隠して、気まずそうに視線を逸らす。きっと今までの人生で人に褒められたり称賛されるのには慣れているはずだ。
それでも病的な照れ屋なのである。
「それに坂上さんから頂きました。姫岡さんが主演しているドラマや映画のDVD。
それを4本もぶっ通しで見てしまったお陰で今日は寝不足です」
その発言に彼は大きな瞳を更に大きくした。
「また坂上さんは勝手な事を……
どうせお前の事だから馬鹿にしてるんだろう?全然俺らしくない役をやりやがってって…」
照れ屋で捻くれているのは彼のデフォなのだろうか。人の事は言えないけれど、何がこの人をそこまでさせるんだろうか。
私から目を逸らす照れ屋で捻くれ者の彼の目をじぃっと見つめる。吸い込まれてしまいそうな透明感のある顔立ちは、テレビ越しの中に見た彼と同じだった。



