よくある三角関係の話だったけれど、主役である姫岡さんが最後結局失恋してしまうというオチには参った。つい最近の私の状態と被りまくったからだ。
そして映画の中の姫岡さんは……私が知っている姫岡真央とは随分違っていた。色々な表情を見せる、実力派俳優。ただただかっこいいだけじゃなくって、素人の私から見ても演技派…というか、彼の演技を見ていると胸がギューッと締め付けられるのだ。
その日は朝まで坂上さんから貰ったDVDを見続けた。
まずは映画から片付けていくつもりで、つまらなくなったら見るのを止めようと決めていた。
けれど結局朝までぶっ通しで4本のDVDを見てしまった。
私の知らない姫岡真央が画面の中で生きている。
その役どころはさまざまだった。普通の高校生だったり、パラレルワールドに迷い込む寡黙な少年だったり、家族を殺された被害者一族の青年だったり…。
同じ人が演じているのに、全部違う人物の人生を演じる。作品ごとに別人のようになる。
まだ彼の作品を少ししか見ていないけれど、坂上さんが’井上真央’という役者に惚れているのは理解出来た。
そして世の中の人が何故彼に惹きつけられるか…ほんの少し理解った気がした。
「はぁ~……」
その日最後に見た映画は……身分の違うふたりの切ない恋物語だった。
見終わった後、自分の頬に涙の痕が出来ているのに気が付いた。何故人は誰かが演じる空想の世界のストーリーにそこまで酔いしれる事が出来るのだろう。
そう疑問に感じた事があった。まるでそれが払拭されるが如く納得してしまった。



