【完】スキャンダル・ヒロイン


じゃあ何で今は仕事をしていないの?とは私がデリカシーがなくなってしまいそうだから聞けなかった。

そこにはきっと私の想像以上の深い理由があって、どこか踏み込んではいけない領域だと思った。

けれど姫岡さんの事を話す坂上さんの誇らしげな顔は印象的だったから、きっと彼のファンも姫岡真央の演技を見て救われていたりするのかもしれない。

「とにかくDVD見て見てよッ!」

そう言って坂上さんから山のようなDVDを押し付けられた。
…全く興味がなかったんだけど……な。


その日は皆に夕食を作って家事を早急に終わらせ、自分の部屋に帰った。

瑠璃さんが「一緒にゲームしようよぉ~」とゲーム機を持って誘ってきたけれど、それは丁重にお断りした。

お昼に坂上さんから押し付けられたDVDの山。実はそれを見るのを楽しみにしている自分がいた。

大量に渡されたDVDのどこから手をつけていいか全く見当がつかなかったが、取り合えず姫岡さんが高校を卒業したばかり…つまりは活動を再開したばかりに出演した映画を1本見て見ようと思った。

18歳の姫岡さんは、今よりほんの少し幼かったけれど、その美しさは変わらなかった。

どうしてこれを1本目に選んでしまったのだろう。

その映画はよくありがちな高校生の青春ストーリーで、少しラブコメ要素の入っている映画だった。

しかし私は不覚にも2時間ぶっ通しでその映画に目を奪われた。