「こっちの映画は特に良くってね。世間ではいまいち受けなかった作品なんだけど、真央くんの演技がすごくいいの。
それにこの連続ドラマはコメディなんだけど元気が出るよ。
真央くんは演技の幅が広いから」
額に大粒の汗を掻きながら坂上さんは一生懸命に姫岡さんの魅力を身振り手振り話す。
山之内さんに関してもだったけれど…。
私は知らないのだ。この寮で過ごす姫岡真央の一部しか知らない。
小さい頃ブームになっていた彼の主演作品は何本か観た記憶がある。けれど小さかったから、可愛らしい男の子だなぁとか、同性代なのにこんな上手に演技が出来てすごいなぁとしか思わなかった。
けれど一生懸命姫岡さんの話をする坂上さんを見ていたら、自然と笑みがこみ上げてきた。
「坂上さんは所属タレント想いの人ですね」
その言葉に一瞬眼を丸くして、直ぐに笑顔を取り繕ったんだ。その笑顔は何故か少しだけ切なく映った。
「いやいやタレント想いっていうか…
僕は’俳優’姫岡真央に惚れてるから」
そう誇らしげに言った瞳は印象的だった。
「静綺ちゃんは態度の大きい生意気な子だって思うかもしれないけど」
「そんな……」
そんな事は大いにある。その上口が悪くてデリカシーの欠片もない。
「彼、すっごく良い演技をするんだ。子役上がりだって嫌味を言う人もいるかもしれないけどさ。
確かに子役時代の真央くんはブームもあって売れたかもしれないけど、大人になってからの彼はそれ以上に魅力的な演技をするんだ。
だから僕は真央くんと仕事が出来るのがすごく嬉しい。
それに天性の才能だけじゃない。彼は陰ですごく努力をしている人だから、それ位強い拘りを持ってお芝居をしているから」



