【完】スキャンダル・ヒロイン


「そう言えば姫岡さん」

「何だよ?」

「セノビックを飲んでも今更身長は高くならないと思いますけど…?」

その言葉に姫岡さんは顔を真っ青にして、ゆっくりと箸を置いた。

セノビックは「園児も!小中高生も!成長期のすべての子どもたちに大切な栄養素をサポート」が謳い文句の健康サポート飲料である。

そして24歳になる姫岡さんの成長期はとっくに終わっていると思う。
しかし彼がトレーニング前それを飲んでいるのを私は知っていた。

「あれは成長期に飲む物ですよ」

「な、な、な、な、何で俺がお前にそんな事を指摘されなきゃいけない!
それに俺はチビなんかじゃねぇ!!」

誰も’チビ’なんて一言も言っていないんだけど。

こめかみに青筋を立てながら、姫岡さんは大きな音を立てて携帯をテーブルに叩きつける。
そこには「日本人の平均身長・体重」と書かれたサイトが開かれていた。

「20歳から24歳までの男子の平均身長は171センチだ!」

「へぇー……」

興味なさげに横目でちらりとサイトを見ると、更に姫岡さんの怒りはヒートアップしていく。

「俺は、176センチある!平均身長よりも5センチも高い。だからお前が思っているようなチビではない!」

だから!誰もあんたを’チビ’だなんて一言も言ってないんだけど…。
どんだけ被害妄想が激しいつーんだ。

「別にチビなんて一言も言ってないですけど…。
て!女の子の方の平均身長158って…」