「本当に美味しいわ。それにバランスもとっても取れている。
さすがは栄養学科専攻なだけあるわ。感心しちゃう。ねぇ、坂上さん」
「ん~…お味噌汁染みるぅ~ッ…インスタント以外で食べるのいつぶりだろう~…。
こんな料理が毎日食べれるなんて幸せだぁ~…」
皆には好評でホッと胸を撫でおろした。
次々に皆が料理に箸をつけていくのを姫岡さんは見て、きょろきょろと挙動不審に辺りを見回す。
ぐぅと小さくお腹が鳴ったのに気づいて、思わずくすりと笑うと、顔を真っ赤にした姫岡さんがチッと舌打ちをしてこちらを睨む。
そして箸に手を合わせて小さく「頂きます」と言った。
一口、口に運ぶと驚いた顔をして再びこちらへ目線を合わせる。
すると物凄い勢いでご飯をかきこんでいく。…なんつーか、変な奴。
「フンッまぁまぁだな」
「あ、姫岡さん人参残してますよ。子供じゃないんだから好き嫌い止めてください。恥ずかしいですよ」
その言葉に隣に座っている豊さんがプッと小さく笑った。
「別に嫌いだから残している訳じゃない!
好きだから最後まで残してるだけだ!たくッ、子供じゃあるまいし好き嫌いなんてあるわけないだろう!」
涙目になって人参を口に運んでいる姿はやっぱり可笑しい。
「まだガキじゃんかねぇ~?人参嫌いとか」
瑠璃さんの言葉を合図に皆で笑いだした。それに姫岡さんは顔を真っ赤にしてぷんすか怒り続けていた。それでも私の用意した夕食、ひとつも残さずに食べてくれた。
意外や意外だ。



