瑠璃さんの優しい言葉にこくんと頷く。
私の方へ伸ばしかけた綺麗で長い腕。そしてあの心配そうなどこか焦った表情。
きっと瑠璃さんや山之内さんが言うように悪い人ではないのだろう。
特別仲良くなる必要もないけれど、少しだけ歩み寄ってみてもバチは当たらないような気がする。
この可愛らしい、キリンさん柄のエプロンに免じて。
「はぁ~~~?こんな物食えるのかよ~?
ド素人が作った料理でも食って腹でも壊したら困るなぁ~?
なんてたって俺は人気俳優だからなぁ~?」
前言撤回。
やっぱりこいつ嫌な奴だ。
一応栄養士の卵。山之内さんに言われた通りバランスの取れた食事を、わざわざ栄養計算までして作った。
それを前にこいつの嫌味は止まらない。
「うわッ。何でこの米変な色してんだ?腐ってんじゃねぇか?」
雑穀米を見て姫岡さんは明らかに嫌そうな顔をした。
本日のメニュー。
親子大根でさっぱりと仕上げたポークソテーポン酢かけ。
人参とニラの塩昆布炒め。
キャベツとジャガイモの味噌汁。
栄養もバランスもたっぷりの出来だ。味だって……一応栄養学科専攻だ。
「あ、旨いっす。」
無口だと思っていた豊さんが顔を上げてこちらへ笑顔を見せた。
お、やっぱり長い前髪に隠れて分かりにくいけど、イケメン。
「ほんとおいひ~!静綺ちゃんてんさ~い!瑠璃こんなにまともなご飯食べたの久しぶりかも~」
瑠璃さんもほっぺを押さえて幸せそうな顔をした。



